日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.21

Vol.21 Theme : 「ニューウェーブはいつまで新しい波なのか

 

 先日、四日市の老舗ガレージBAND、GASOLINE(ガソリン)のやんちゃなギタリスト、コウイチロウが率いるニューウェーブBAND、XERO FICTION(ゼロ・フィクション)が1stアルバムをリリースし、70’sパワーPOP(これに関してはいつかまた)や80’sニューウェーブ好きの琴線に触れる懐かしくもフレッシュなサウンドを聴かせてくれたのですが……そもそも「ニューウェーブ」って何でしょう? それを考察するべく、今回は元祖ニューウェーブと言っても過言ではないDEVO(ディーヴォ)をご紹介します。

 DEVOは70年代中頃から活動する、おそらくアメリカ初の……もしかしたら世界初の? ニュー・ウェーブBANDです。初期はガレージROCK的な初期衝動溢れるサウンドを鳴らしながら、3コードではないちょっと捻ったROCKを演奏していましたが(「Uncontrollable Urge」や、もはや原形を留めていないストーンズのカヴァー「[I Can’t Get No] Satisfaction」等)、徐々にシンセ・ベースや打ち込みを導入し(「Girl U Want」「Whip It」等)、テクノっぽいビート感とギターサウンドを両立させるという離れ業をやってのけました。

  なぜ「離れ業」なのか……それまでのROCKでは、ラウドギター+生ドラムに、シンセサイザーを混ぜるという音楽が存在しなかったからです。ディーヴォも今の耳で聴くとさほどラウドには聴こえませんが、当時としては革命的なことだったのです(「Jerkin’ Back ‘N’ Forth」「Peek-A-Boo」等)……PUNKっぽいギターサウンドに鍵盤が入る場合は、エルヴィス・コステロのようなオルガン主体のサウンドが殆どでしたし、逆にシンセサイザーが入る場合はアンビエントな物か、打ち込みドラムによる非ラウドなテクノサウンドしかなかったのでした。

 世界でも類を見ない「勢いのあるPUNK ROCKにシンセサイザーを混ぜる」という革命的なスタイルを確立しながらも、音楽的に保守的だった当時のアメリカでは(アメリカ人の皆様すみません)なかなか理解されず、まずはヨーロッパで人気を博したのもディーヴォっぽいエピソードで、その証拠に彼らの最初のリリースは、コステロやダムドマッドネス等エッジーなリリースで知られるイギリスのインディー・レーベルSTIFFからでした。

 それがアメリカに逆輸入されて人気を博し、ここ日本でもカルト的な人気が爆発。YMOプラスチックス等、80年代当時のテクノ/ニューウェーブBAND達は、ディーヴォのアレンジを相当研究したという逸話も聞いたことがあります。ゆえに昭和チルドレンな我々はそこから遡ってディーヴォを聴くことになるのですが(俺より一周りも二周りも若いポリシックスのように、更に遡って影響を受けるパターンもあり)、もしかしたら今の四つ打ちサウンド好きにもそれは当てはまるかもしれませんね。

 ちなみにディーヴォといえば、お揃いの黄色いツナギに、巻きグソみたいな赤い帽子(通称エナジードーム)という個性的なルックスでも知られており、おそらく当時のアメリカ及び世界的なエコノミズムへの警鐘として、わざとブルーカラーっぽい匿名性を出すためにお揃いの格好をしていたのだと思いますが(リーダーのマークと中心メンバーのジェリーは美大生だったので色んなメッセージが込められているとも思いますが)、アートを通じてメッセージを発信する活動も非常にパンキッシュで、その個性的なサウンドも含め、どれだけイロモノ的な活動をしようとも、リスナーからの絶大な支持を得続けている稀有なBANDでもあります。この機会に是非ご一聴をば。

 

今回ご紹介した楽曲を収録!
ベストアルバム『Greatest Hits』/Devo

 


 

【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。